理学療法士が教える変形性股関節症について

ケガ予防




こんにちは!今回は、変形性股関節症のお話です。

変形性股関節症とは?

変形性股関節症は、股関節の軟骨が徐々に磨耗し、関節が変形する疾患です。軟骨が減少することで、骨同士が直接擦れ合い、痛みや炎症を引き起こします。主に中高年に多く見られますが、若年層でも発症することがあります。この病気は日常生活に大きな影響を与え、放置すると歩行困難に陥る可能性があります。

変形性股関節症の罹患率について

変形性股関節症の罹患率は、年齢とともに増加します。40歳以上の成人の約10%が何らかの程度でこの病気に罹患していると言われています。特に高齢者では、約30%が症状を抱えていると報告されています。女性は男性よりも罹患率が高く、特に閉経後の女性はホルモンバランスの変化が影響していると考えられています。

変形性股関節症の病態と原因について

変形性股関節症の病態は、主に関節軟骨の劣化によるものです。軟骨が摩耗し、骨が直接接触することで炎症が起こり、痛みや腫れが発生します。これにより関節の可動域が制限され、運動が困難になります。

原因

  1. 加齢: 年齢とともに軟骨の弾力性が失われ、摩耗が進みます。
  2. 遺伝的要因: 家族に同じ疾患を持つ人がいる場合、罹患リスクが高まります。
  3. 外傷: 過去の骨折や脱臼などが原因で、関節の変形が進行することがあります。
  4. 過度の負荷: 重労働やスポーツによる関節への過度な負荷が原因となることがあります。
  5. 肥満: 体重が増えることで股関節への負担が増え、軟骨が摩耗しやすくなります。

変形性股関節症の予防とケアについて

運動

適度な運動は、股関節の健康を維持し、変形性股関節症の進行を遅らせる効果があります。特に関節周囲の筋肉を強化することが重要です。以下に効果的な運動を紹介します。

  1. ストレッチ: 股関節周囲の筋肉を柔軟に保つためのストレッチを行いましょう。特に腸腰筋、大腿四頭筋、殿筋群を重点的にストレッチします。
  2. 筋力トレーニング: 筋肉を強化することで、関節への負担を軽減できます。以下の筋肉を重点的に鍛えます。
    • 腸腰筋: 膝を曲げた状態で脚を上げ下げする運動を繰り返します。
    • 大腿四頭筋: スクワットやレッグプレスなどの運動を取り入れます。
    • 殿筋群: ヒップリフトやヒップアブダクションなどのエクササイズが効果的です。

食生活の改善と体重のキープ

食生活の改善も予防には欠かせません。抗炎症作用のある食品を積極的に摂取し、体重を適正範囲に保つことが重要です。以下のポイントに注意しましょう。

  1. 抗炎症食品: 魚(特にオメガ3脂肪酸が豊富なもの)、緑黄色野菜、果物(特にベリー類)を積極的に摂取します。
  2. カルシウムとビタミンD: 骨の健康を維持するために、カルシウムとビタミンDを含む食品(乳製品、豆類、卵など)を摂取します。
  3. 適正体重の維持: 適正体重を維持することで、股関節への負担を軽減します。特に肥満は関節の負荷を増大させるため、減量が必要な場合は計画的に行いましょう。

変形性股関節症の予後について

変形性股関節症の予後は、治療方法や患者の状態によって異なりますが、適切な治療を受けることで日常生活への影響を最小限に抑えることが可能です。

手術か保存的治療の選択

治療法は主に手術と保存的治療の2つに分かれます。軽度から中等度の症状の場合、リハビリテーションや薬物療法を中心とした保存的治療が選択されます。一方、重度の症状や保存的治療で効果が見られない場合は、手術が検討されます。

手術の成功率

手術に対する不安を感じる患者も多いですが、現在の手術技術は非常に進歩しており、成功率も高いです。全国的なデータでは、股関節置換手術後の歩行獲得率は90%以上に達しており、多くの患者が日常生活に復帰しています。

私が経験した症例について

70代女性:肥満

この患者さんは、70代で肥満のため股関節に過度の負荷がかかっていました。初診時には強い痛みと歩行困難を訴えており、DrからのOPEか保存的治療を迫られていたところでした。
私個人としては、どちらもメリットがあるので本人次第でしたが本人様は保存療法を試みました。体重管理第一とし運動療法を徹底し、半年後には痛みが軽減しNRS3程度まで回復。日常生活が大幅に改善しました。

50代男性:臼蓋形成不全

50代の男性患者は、先天性の臼蓋形成不全が原因で変形性股関節症を発症しました。保存的治療では効果が見られず、最終的に股関節置換術を実施。術後のリハビリを継続的に行うことで、術後6か月で完全に歩行を回復し、仕事にも復帰しました。

80代女性:股関節拘縮

この患者さんは、10年以上にわたる股関節拘縮が原因で変形性股関節症を発症。関節の動きがほとんどなく、保存的治療が難しい状況でした。手術後のリハビリで少しずつ可動域を広げることができましたが、完全な回復には至りませんでした。それでも、痛みの軽減と基本的な生活動作の改善が見られました。

変形性股関節症にいい運動

変形性股関節症の予防と管理には、適切な運動が不可欠です。以下に推奨される運動を紹介します。

ストレッチ

  1. 腸腰筋ストレッチ: 仰向けに寝て片膝を胸に引き寄せる。
  2. 大腿四頭筋ストレッチ: 立った状態で片足を後ろに引き、かかとを臀部に近づける。
  3. 殿筋群ストレッチ: 座った状態で片足を反対側の膝の上に乗せ、体を前に倒す。

筋トレ

  1. 腸腰筋: 膝を曲げた状態で脚を上下に動かす。
  2. 大腿四頭筋: スクワットを行う。
  3. 殿筋群: ヒップリフトやヒップアブダクションを行う。

まとめ

変形性股関節症は、加齢や遺伝、外傷、過度の負荷、肥満などさまざまな要因で発症します。予防とケアには、適切な運動と食生活の改善が重要です。早期に対策を講じることで、症状の進行を遅らせることが可能です。また、手術が必要な場合でも、高い成功率を誇る手術技術により、多くの患者が日常生活に復帰しています。適切な治療とケアで、変形性股関節症と上手に付き合いながら、より良い生活を送ることができるでしょう。


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