理学療法士が教える脳卒中について

ケガ予防


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こんにちは!今回は、私の経験を活かして脳卒中についてお話ししたいと思います。理学療法士として、脳卒中のリハビリテーションに携わる中で得た知識や経験を共有し、皆さんが脳卒中を理解し、予防するための情報をお届けします。

脳卒中とは?

脳卒中は、脳内の血管が詰まったり、破れたりすることで脳に血液が届かなくなり、脳細胞がダメージを受ける病気です。大きく分けて、血管が詰まる「脳梗塞」と血管が破れる「脳出血」、そしてくも膜下に出血が起こる「くも膜下出血」の3種類があります。これらはいずれも突然発症することが多く、早急な対応が必要です。

脳卒中の罹患率

日本では年間約30万人が脳卒中を発症すると言われています。これは、年齢を問わず多くの人々に影響を与える重大な健康問題です。特に高齢者に多く見られますが、若年層でも生活習慣や遺伝的要因によりリスクが高まることがあります。

初期症状

脳卒中の初期症状には以下のようなものがあります:

  • 突然の片方の顔や腕、脚の麻痺
  • 突然の視力低下や視野の欠損
  • 言葉が出にくくなる、理解しにくくなる
  • 突然の強い頭痛
  • めまいやふらつき

これらの症状が現れた場合、直ちに医療機関を受診することが重要です。早期の治療が後遺症を軽減する鍵となります。

後遺症について

脳卒中の後遺症は多岐にわたり、個人差があります。主な後遺症としては以下が挙げられます:

  • 失語症:言葉の理解や発話が困難になる症状。
  • 嚥下障害:食べ物や飲み物をうまく飲み込めなくなる症状。
  • 麻痺:体の一部または全体の動きが制限される症状。

これらの後遺症はリハビリテーションによって改善が見込めることが多いですが、長期間にわたる治療が必要となる場合もあります。

リスクについて

脳卒中のリスク要因には以下のものがあります:

  • 高血圧:血管に過剰な負担をかけ、脳卒中のリスクを高めます。
  • 糖尿病:血管の健康に影響を与え、脳卒中のリスクを増加させます。
  • 喫煙:血管に悪影響を及ぼし、脳卒中のリスクを高めます。
  • 高コレステロール:動脈硬化を引き起こし、脳卒中のリスクを増加させます。
  • 肥満:体重増加は心血管系の負担を増やし、脳卒中のリスクを高めます。
  • 脳動脈奇形:主にくも膜下出血の危険因子です。

私の脳卒中リハビリで大変だったこと・辛かったこと

脳卒中リハビリは長い道のりです。私自身も多くの患者さんと共に苦労を経験しました。特に辛かったのは、失語症の患者さんとのコミュニケーションです。言葉がうまく伝わらないもどかしさや、患者さん自身のストレスに寄り添うことが求められました。

また、私がメインではありませんでしたが嚥下障害のリハビリも困難を伴いました。食事ができないことで栄養状態が悪化し、全身の機能回復が遅れることが多かったです。これらの課題を乗り越えるためには、根気強いアプローチと多職種との連携が不可欠です。

以下に脳卒中リハビリの運動療法について例をお話ししたいと思います。脳卒中は急性期、回復期、そして生活維持期という3つの段階に分かれ、それぞれの段階で適した運動療法が異なります。理学療法士としての経験を活かし、各段階における運動療法の重要性と具体的なアプローチについて詳しく説明します。

急性期の運動療法

目標

急性期は脳卒中発症から約1週間以内の期間を指します。この時期の運動療法の主な目標は、二次的な合併症の予防と早期の機能回復を促すことです。

主要な運動療法

  1. ポジショニング
    • ベッド上での適切な体位を維持することで、圧迫による褥瘡(じょくそう:床ずれ)や拘縮(関節の固まり)を防ぎます。
    • 頻繁に体位を変えることが推奨されます。
  2. 早期の起き上がりと座位訓練
    • ベッド上での起き上がりや座位を保つ練習を行います。これにより、循環系の安定を図り、筋力低下を防ぎます。
  3. 他動運動
    • 患者自身で動かすことが難しい場合、理学療法士が手や足を動かす他動運動を行います。これにより関節の柔軟性を保ちます。
  4. 呼吸訓練
    • 呼吸筋の強化や呼吸機能の改善を目指します。深呼吸や呼吸パターンの改善を促すエクササイズを行います。

回復期の運動療法

目標

回復期は急性期を過ぎた後の数ヶ月間を指し、主な目標は機能回復と日常生活動作(ADL)の改善です。

主要な運動療法

  1. 座位・立位バランス訓練
    • 座ったり立ったりする際のバランスを訓練します。これにより、転倒リスクを減らし、日常生活の動作をスムーズにします。
  2. 歩行訓練
    • 歩行能力の回復を目指します。初めは平坦な場所での平行棒歩行から始め、徐々に階段や斜面などの難易度を上げていきます。
  3. 筋力強化訓練
    • 上肢、下肢、および体幹の筋力を強化するための運動を行います。軽いダンベルやエクササイズバンドを使用することが一般的です。
  4. 協調運動訓練
    • 手足の協調運動を訓練し、細かい動作や日常生活動作の改善を目指します。例えば、ボールを使ったキャッチや指先を使ったエクササイズなどがあります。
  5. 機能的電気刺激(FES)
    • 筋肉に電気刺激を与えることで、動きをサポートし、筋力の回復を促進します。

生活維持期の運動療法

目標

生活維持期は回復期を過ぎた後の長期的なリハビリテーションを指し、主な目標は獲得した機能の維持とさらなる向上、そして生活の質の向上です。

主要な運動療法

  1. 継続的な歩行訓練
    • 定期的な歩行訓練を続けることで、歩行能力を維持し、日常生活での自立を促します。
  2. 有酸素運動
    • 心肺機能の向上を目指し、ウォーキングや水中運動、サイクリングなどの有酸素運動を取り入れます。
  3. 筋力強化とストレッチ
    • 筋力を維持し、関節の柔軟性を保つための運動を継続します。特に自宅で簡単にできるエクササイズを取り入れると良いでしょう。
  4. バランス訓練
    • バランス能力を維持するための運動を継続します。例えば、片足立ちやバランスボールを使用したトレーニングなどがあります。
  5. レクリエーション活動
    • 趣味や興味のある活動を取り入れることで、心の健康を保ち、モチベーションを維持します。例えば、ガーデニングやダンスなどがあります。

脳卒中を予防するために今からできること

脳卒中を予防するためには、生活習慣の改善が重要です。以下の点に気を付けましょう:

生活習慣の改善

  • バランスの取れた食事:野菜や果物、魚を多く取り入れ、塩分や脂肪の摂取を控えましょう。
  • 定期的な健康チェック:血圧や血糖値、コレステロール値を定期的にチェックし、異常があれば早めに対処することが重要です。
  • 適切な水分補給

運動

  • 有酸素運動:週に3〜4回、30分程度のウォーキングやジョギングを取り入れましょう。
  • 筋力トレーニング:筋力を維持することで、全身の健康を保つことができます。

睡眠の安定化

  • 十分な睡眠:質の良い睡眠を確保するために、規則正しい生活リズムを心がけましょう。
  • 寝る前のリラックス:スマホやテレビの使用を控え、リラックスできる環境を整えましょう。

ストレスの軽減

  • リラックス法の実践:深呼吸や瞑想、ヨガなどを取り入れて、日々のストレスを軽減しましょう。
  • 趣味を持つ:趣味を楽しむことで、心の健康を保つことができます。

自宅でできる簡単な有酸素運動

以下は自宅で簡単にできる20分間の有酸素運動のサーキットトレーニングです。

サーキット1

  1. ウォーキング(5分):その場で足踏みをしながら腕を振ります。
  2. ジャンピングジャック(2分):両足を開きながら両手を頭上に上げる動作を繰り返します。
  3. ニーリフト(3分):膝を高く上げて足踏みをします。
  4. サイドステップ(2分):左右にステップを踏みます。
  5. クールダウン(5分):軽いストレッチで体をほぐします。

サーキット2

  1. ウォーキング(5分):軽くその場で歩きます。
  2. ステップタッチ(2分):左右に足を出してタッチします。
  3. バーピー(3分):ジャンプ、スクワット、プランクを組み合わせた運動です。
  4. ハイニー(2分):膝を高く上げて足踏みをします。
  5. クールダウン(5分):軽いストレッチで体をほぐします。

サーキット3

  1. ウォーキング(5分):その場で足踏みをしながら腕を振ります。
  2. スキップ(2分):その場でスキップをします。
  3. サイドランジ(3分):左右に深く腰を落とす運動です。
  4. マウンテンクライマー(2分):プランクの姿勢から膝を交互に胸に引き寄せます。
  5. クールダウン(5分):軽いストレッチで体をほぐします。

まとめ

脳卒中は突然発症し、重大な後遺症をもたらす可能性のある病気です。しかし、日々の生活習慣を見直し、適切な予防策を講じることでリスクを大幅に減らすことができます。定期的な運動やバランスの取れた食事、十分な睡眠とストレス管理が鍵です。また、脳卒中の初期症状を理解し、早期に対応することも重要です。これからも健康に気を付け、元気に過ごしましょう!

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